On US Anime Cons for JP Foundation's WOCHI KOCHI
Yumiko Sakuma nails the scene:
今、海外のアニメ・コンベンションが、猛烈な勢いで人気を増している。
アメリカでは年間に200以上のコンベンションが開催され、ヨーロッパでも2000年にパリで初めて開催された<ジャパン・エキスポ>を筆頭に、東西南北に広がりを見せている。最初の年に3200人が参加した<ジャパン・エキスポ>の2011年の入場者数が19万2000人だったといえば、その勢いの凄まじさをわかっていただけるだろうか。欧米だけではない。ブラジルでは年に2度<アニメ・フレンズ>が開催されている。インドでは2011年に<インド・アニメ・コンベンション>が幕を開け、2万人の入場者を集めた。中国では、2011年11月に日中両政府の共催で<日本アニメ・フェスティバル>が開幕したが、来年は国交正常化40周年とあって、さらなる盛り上がりが期待できそうだ。東南アジアでも、2007年にはじまったベトナムの<アクティブ・エクスポ>など、コスプレを中心に徐々にイベントの数が増えている。
<ジャパン・エキスポ>フランス・パリ
<アクティブ・エクスポ>ベトナム・ハノイ
日本のポップカルチャーに詳しく、「ジャパナメリカ 日本発ポップカルチャー革命」の著者であるローランド・ケルツ氏が解説する。
「フランスで最初に火がつき、アメリカが後を追った。その後ろに、南米、スペイン、イギリスなどがついてきているという印象です」
90年代にはステレオタイプ化することができた海外のアニメファンだが、2000年代中盤から一気に多様化した。たとえばアメリカの「アニメファン」といえば、アジア系アメリカ人や白人の男性が中心で、日本でいうところの「オタク」のイメージに近い若者が主流だった。
「今<ニューヨーク・アニメ・フェスティバル>では、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック、ヨーロッパ人が優勢で、むしろアメリカの白人は少数派になっています(ケルツ氏)」
<ニューヨーク・アニメ・フェスティバル>アメリカ・ニューヨーク
アメリカ最大のコンベンション、ロサンゼルスの<アニメ・エキスポ>を運営するソサイエティ・フォー・ザ・プロモーション・オブ・ジャパニーズ・アニメーション(SPJA)のCEOであるマーク・ペレス氏によると、西海岸では、2000年頃には圧倒的に多かった男性客の割合が、入場者の増加とともにどんどん低下し、今ではやや女性客のほうが多くなった。2011年には、過去最高の12万人を動員した。
「白人、ヒスパニックやネイティブ・アメリカンが多く、アジア系アメリカンが占める割合が低下しています(ペレス氏)」
<アニメ・エキスポ>アメリカ・ロサンジェルス
女性客が増えているのは、パリの<ジャパン・エキスポ>でも同様だ。創立者のひとりであるトマ・シルデ氏が語る。
「オープン当初は、参加者のほとんどが男性だった。2006年頃から音楽やファッションを通じて日本文化を発見した女性たちが急激に増え、今では少女漫画が小さなブームになりつつあります」
<ジャパン・エキスポ>フランス・パリ
海外のアニメ・コンベンションが急速に広がっている理由に、若者たちの間でコスプレが圧倒的に支持されていること、そしてコスプレファンの間で、出会いの場、コミュニティが集まる場として機能していることがある。 「アメリカの田舎では、インターネットでアニメと出会った若者たちが、地元で仲間を探し、車を共同で借りて、アニメ・コンベンションに出かけていく。彼らが求めているのは、日常生活からの逃避です。コンベンションの開催期間中は、コスプレでキャラクターに扮することで、自分自身になることができる。そこには自分と同じことに興味をもった人たちで形成されるコミュニティがあって、理解しあうことができるのです(ケルツ氏)」
週間アスキーの元総副編集長で、<Tokyo Kawaii Magazine>の編集長、福岡俊弘氏は2009年に初めてパリの<ジャパン・エキスポ>を訪れて以来、バルセロナ、マルセイユ、ニューヨーク、バルチモア、ロサンゼルスなど数々のコンベンションに足を運んできた。
「コスチュームに身を包んだ人々が電車に乗ってコンベンションに向かい、会場にはいたるところで撮影隊が写真を撮っている。日本のアニメ文化がこれだけ受け入れられていること、そしてその自由な雰囲気に驚きました」
日本のイベントといえば、コミックマーケット(コミケ)が代表的で、3日間で60万人を動員するが、同人誌販売が中心で、コスプレがメインではないのが大きな違い。海外のコンベンションでは、たとえば<アニメ・エクスポ>では参加者の75%が少なくとも1日はコスプレに参加するというくらい、コスプレ文化が浸透している。 海外でのコスプレブームに呼応する形で、日本でもコスプレ専門のイベントがある。2003年から名古屋で行われている<世界コスプレサミット>だ。ブラジルには<ワールド・コスプレ・サミット>という予選が行われているし、各地のコンベンションで予選を行うこともある。昨年は<世界コスプレサミット>の優勝者がベトナムを訪れたり、コスプレを通じた国際交流も盛んになってきた。
<世界コスプレサミット>日本・名古屋
海外でちょっとしたブームを巻き起こしているコスプレだが、国や地域によって、アプローチが微妙に違うのも興味深い。
「メリーランド州バルチモアで行われる<オタコン>では『鋼の錬金術師』のマスタング大佐が死ぬシーンを、電話ボックス付きのコスプレで表現している人が拍手喝采を浴びていた。パフォーマンス性が高いアメリカのファンに対し、パリのファンは、原作に対するリスペクトから、キャラクターに忠実であることをよしとする。パリとアメリカの間には、競争心のようなものもあるようですよ(福岡氏)」
<オタコン>アメリカ・ニューヨーク
お国柄が現れるのはコスプレだけではない。
「スペインでは2010年の書籍のベストセラー・ランキングの1位が村上春樹だったほどの日本ブームが起きている。アニメでは『クレヨンしんちゃん』が老若男女問わず知名度が高い。マルセイユでは、カラオケ大会がメインのイベントで、来場者たちがポケモンの主題歌を日本語で合唱する姿を目撃しました。また海外で最初に初音ミクの存在を感知したのは、ハワイの<カワイイコン>だったんです(福岡氏)」
ニューヨークの<アニメ・フェスティバル>が、都会の日常のなかでふらりと出かける気楽なイベントである一方で、ロスの<アニメ・エクスポ>は、年に一度、気合を入れたコスプレイヤーたちが全米やカナダからやってくる巨大なお祭り。シアトルでは、若者から中年まで様々な世代がコスプレを楽しむ。パリでは<NARUTO-ナルト>や<ONE PIECE>、ロスでは<BLEACH>、<Axis Powers ヘタリア>というように、人気の作品も微妙に異なる。福岡氏のコメントからもわかるように、スペインの<サロン・デル・マンガ >では、「クレヨンしんちゃん」や「うる星やつら」など、懐かしいアニメのコスプレをしたスペイン人と会えるという。
<サロン・デル・マンガ>スペイン・バルセロナ
海外のファンたちは、漫画やアニメの情報をどうやって得ているのだろうか?
<ジャパン・エキスポ>のシルデ氏によると、フランスでは漫画作品が流行するためには、フランス語の翻訳版が出版される必要がある。一方、アメリカでは、合法な過程で流通に乗らなくても、インターネットを介して情報がやり取りされ、正式に英語化される前に火がつくこともある。
「アニメを視聴する人口は増えていますが、そのぶん、違法のメディアを無料で視聴する層も増えている。これはひとつの課題です(ペレス氏)」
「インターネットの力は大きい。オンラインのコミュニティが存在して、アニメがインターネットにアップされると、1日、2日という時間で字幕がつく。メジャーな流通に乗っていないからこそ、ソーシャルの力が働きやすいのかもしれません(福岡氏)」
今のところ、前述したメジャー作品の人気が圧倒的とはいえ、現在日本で支持を集める「進撃の巨人」や「君に届け」などがアメリカでブレイクする日も遠くないのかもしれない。
日本のアニメがこれだけ受け入れられる理由はなんなのだろうか。福岡氏は<オタコン>を訪れた際に、「NANA」の大ファンだというアフリカ系アメリカ人の女性に話を聞いた。
「聞いてみると、女性がはまれるエンターテイメントはアメリカには意外と少ないというんです。『NANA』は日本の物語ですが、田舎から都会に出る女性の成功物語であり、女性同士の友情や恋愛といったユニバーサルな要素がたくさんある」
「日本の漫画やアニメは、大人にも子供にもアピールする点を併せ持っている。アニメーションの側面が子供を惹きつけ、大人が楽しむためのストーリー性やアクションがある。アメコミとの最大の違いはそこです(ペレス氏)」。
アニメ・コンベンションの関係者たちは、将来をどう見通しているのだろうか。
「今後想像できるのは、日本のアニメに気がついたアメリカの映画スタジオが、たとえば宮崎駿氏のような日本のアニメのクリエーターとタッグを組むこと。日米共同の作品が見られるかもしれません(ケルツ氏)」
「クオリティの伴った拡大を目指しています。参加者が安心して楽しめると同時に、企業にもアピールするコンベンションとして成長していきたい(ペレス氏)」
ファッション、音楽、食など、多岐にわたるプログラムで他のコンベンションと違う<ジャパン・エキスポ>のシルデ氏はこう語る。
「<ジャパン・エキスポ>の入場者の大半はアニメファンですが、アニメを通じて日本文化と出会い、日本のことをもっと知りたいと望むファンも多い。アニメ以外の文化に興味を持ってもらうことがひとつの目標です」
ローランド・ケルツ
アメリカ人の父親と日本人の母親の間に生まれ、アメリカと日本で育つ。オーバリン大学、コロンビア大学を卒業後、ニューヨーク大学、ラトガーズ大学、バーナード大学などの教壇に立つ。アメリカでは「プレイボーイ」「サロン」「ヴィレッジ・ヴォイス」「コスモポリタン」「ヴォーグ」などの雑誌や新聞に寄稿する。現在は東京とニューヨークを数ヶ月ずつ行ったり来たりしている。著書に「ジャパナメリカ 日本発ポップカルチャー革命」がある。http://japanamerica.blogspot.com/
トマ・シルデ
1979年フランス生まれ。ビジネス・スクールを卒業後、音楽系出版社勤務を経て、複数のパートナーとともに<ジャパン・エクスポ>の創設にかかわり、2000年の第一回開催に尽力する。2004年には漫画の出版社<Taïfu Comics>を、2009年にはポップ・カルチャーのイベント<コミック・コン・パリ>を創立するなど精力的に活動する。現在は<ジャパン・エクスポ>のバイス・プレジデントを務める。http://www.japan-expo.com/
マーク・ペレス
大学時代に友人の誘いでアニメのクラブに参加して<カウボーイビバップ>と出会ってアニメに興味を持ち、2002年から<アニメ・エクスポ>にボランティアとして参加。2004年からスタッフに加わり、2007年には<アニメ・エクスポ>を運営するソサイエティ・フォー・ザ・プロモーション・オブ・ジャパニーズ・アニメーション(SPJA)の役員会に迎えられ、2009年にCEOに就任。2010年に一度CEO職を退いたが、2011年に復職した。http://www.spja.org/
福岡俊弘
1957年生まれ。1989年アスキー(現:アスキー・メディアワークス)入社。 92 年よりパソコン情報誌「 EYE ・ COM 」編集長。 97年から『週刊アスキー』編集長を務めたほか、ふたつの雑誌の創刊にも携わる。2003年からは同誌編集人。現在はiPhoneで読む海外向けの雑誌アプリ<Tokyo Kawaii Magazine>の編集長を務める。
進化するコスプレ、マンガとアニメが世界を席巻する
ローランド・ケルツ
トマ・シルデ
マーク・ペレス
福岡俊弘
トマ・シルデ
マーク・ペレス
福岡俊弘
今、海外のアニメ・コンベンションが、猛烈な勢いで人気を増している。
アメリカでは年間に200以上のコンベンションが開催され、ヨーロッパでも2000年にパリで初めて開催された<ジャパン・エキスポ>を筆頭に、東西南北に広がりを見せている。最初の年に3200人が参加した<ジャパン・エキスポ>の2011年の入場者数が19万2000人だったといえば、その勢いの凄まじさをわかっていただけるだろうか。欧米だけではない。ブラジルでは年に2度<アニメ・フレンズ>が開催されている。インドでは2011年に<インド・アニメ・コンベンション>が幕を開け、2万人の入場者を集めた。中国では、2011年11月に日中両政府の共催で<日本アニメ・フェスティバル>が開幕したが、来年は国交正常化40周年とあって、さらなる盛り上がりが期待できそうだ。東南アジアでも、2007年にはじまったベトナムの<アクティブ・エクスポ>など、コスプレを中心に徐々にイベントの数が増えている。
<ジャパン・エキスポ>フランス・パリ
<アクティブ・エクスポ>ベトナム・ハノイ
日本のポップカルチャーに詳しく、「ジャパナメリカ 日本発ポップカルチャー革命」の著者であるローランド・ケルツ氏が解説する。
「フランスで最初に火がつき、アメリカが後を追った。その後ろに、南米、スペイン、イギリスなどがついてきているという印象です」
90年代にはステレオタイプ化することができた海外のアニメファンだが、2000年代中盤から一気に多様化した。たとえばアメリカの「アニメファン」といえば、アジア系アメリカ人や白人の男性が中心で、日本でいうところの「オタク」のイメージに近い若者が主流だった。
「今<ニューヨーク・アニメ・フェスティバル>では、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック、ヨーロッパ人が優勢で、むしろアメリカの白人は少数派になっています(ケルツ氏)」
<ニューヨーク・アニメ・フェスティバル>アメリカ・ニューヨーク
アメリカ最大のコンベンション、ロサンゼルスの<アニメ・エキスポ>を運営するソサイエティ・フォー・ザ・プロモーション・オブ・ジャパニーズ・アニメーション(SPJA)のCEOであるマーク・ペレス氏によると、西海岸では、2000年頃には圧倒的に多かった男性客の割合が、入場者の増加とともにどんどん低下し、今ではやや女性客のほうが多くなった。2011年には、過去最高の12万人を動員した。
「白人、ヒスパニックやネイティブ・アメリカンが多く、アジア系アメリカンが占める割合が低下しています(ペレス氏)」
<アニメ・エキスポ>アメリカ・ロサンジェルス
女性客が増えているのは、パリの<ジャパン・エキスポ>でも同様だ。創立者のひとりであるトマ・シルデ氏が語る。
「オープン当初は、参加者のほとんどが男性だった。2006年頃から音楽やファッションを通じて日本文化を発見した女性たちが急激に増え、今では少女漫画が小さなブームになりつつあります」
<ジャパン・エキスポ>フランス・パリ
海外のアニメ・コンベンションが急速に広がっている理由に、若者たちの間でコスプレが圧倒的に支持されていること、そしてコスプレファンの間で、出会いの場、コミュニティが集まる場として機能していることがある。 「アメリカの田舎では、インターネットでアニメと出会った若者たちが、地元で仲間を探し、車を共同で借りて、アニメ・コンベンションに出かけていく。彼らが求めているのは、日常生活からの逃避です。コンベンションの開催期間中は、コスプレでキャラクターに扮することで、自分自身になることができる。そこには自分と同じことに興味をもった人たちで形成されるコミュニティがあって、理解しあうことができるのです(ケルツ氏)」
週間アスキーの元総副編集長で、<Tokyo Kawaii Magazine>の編集長、福岡俊弘氏は2009年に初めてパリの<ジャパン・エキスポ>を訪れて以来、バルセロナ、マルセイユ、ニューヨーク、バルチモア、ロサンゼルスなど数々のコンベンションに足を運んできた。
「コスチュームに身を包んだ人々が電車に乗ってコンベンションに向かい、会場にはいたるところで撮影隊が写真を撮っている。日本のアニメ文化がこれだけ受け入れられていること、そしてその自由な雰囲気に驚きました」
日本のイベントといえば、コミックマーケット(コミケ)が代表的で、3日間で60万人を動員するが、同人誌販売が中心で、コスプレがメインではないのが大きな違い。海外のコンベンションでは、たとえば<アニメ・エクスポ>では参加者の75%が少なくとも1日はコスプレに参加するというくらい、コスプレ文化が浸透している。 海外でのコスプレブームに呼応する形で、日本でもコスプレ専門のイベントがある。2003年から名古屋で行われている<世界コスプレサミット>だ。ブラジルには<ワールド・コスプレ・サミット>という予選が行われているし、各地のコンベンションで予選を行うこともある。昨年は<世界コスプレサミット>の優勝者がベトナムを訪れたり、コスプレを通じた国際交流も盛んになってきた。
<世界コスプレサミット>日本・名古屋
海外でちょっとしたブームを巻き起こしているコスプレだが、国や地域によって、アプローチが微妙に違うのも興味深い。
「メリーランド州バルチモアで行われる<オタコン>では『鋼の錬金術師』のマスタング大佐が死ぬシーンを、電話ボックス付きのコスプレで表現している人が拍手喝采を浴びていた。パフォーマンス性が高いアメリカのファンに対し、パリのファンは、原作に対するリスペクトから、キャラクターに忠実であることをよしとする。パリとアメリカの間には、競争心のようなものもあるようですよ(福岡氏)」
<オタコン>アメリカ・ニューヨーク
お国柄が現れるのはコスプレだけではない。
「スペインでは2010年の書籍のベストセラー・ランキングの1位が村上春樹だったほどの日本ブームが起きている。アニメでは『クレヨンしんちゃん』が老若男女問わず知名度が高い。マルセイユでは、カラオケ大会がメインのイベントで、来場者たちがポケモンの主題歌を日本語で合唱する姿を目撃しました。また海外で最初に初音ミクの存在を感知したのは、ハワイの<カワイイコン>だったんです(福岡氏)」
ニューヨークの<アニメ・フェスティバル>が、都会の日常のなかでふらりと出かける気楽なイベントである一方で、ロスの<アニメ・エクスポ>は、年に一度、気合を入れたコスプレイヤーたちが全米やカナダからやってくる巨大なお祭り。シアトルでは、若者から中年まで様々な世代がコスプレを楽しむ。パリでは<NARUTO-ナルト>や<ONE PIECE>、ロスでは<BLEACH>、<Axis Powers ヘタリア>というように、人気の作品も微妙に異なる。福岡氏のコメントからもわかるように、スペインの<サロン・デル・マンガ >では、「クレヨンしんちゃん」や「うる星やつら」など、懐かしいアニメのコスプレをしたスペイン人と会えるという。
<サロン・デル・マンガ>スペイン・バルセロナ
海外のファンたちは、漫画やアニメの情報をどうやって得ているのだろうか?
<ジャパン・エキスポ>のシルデ氏によると、フランスでは漫画作品が流行するためには、フランス語の翻訳版が出版される必要がある。一方、アメリカでは、合法な過程で流通に乗らなくても、インターネットを介して情報がやり取りされ、正式に英語化される前に火がつくこともある。
「アニメを視聴する人口は増えていますが、そのぶん、違法のメディアを無料で視聴する層も増えている。これはひとつの課題です(ペレス氏)」
「インターネットの力は大きい。オンラインのコミュニティが存在して、アニメがインターネットにアップされると、1日、2日という時間で字幕がつく。メジャーな流通に乗っていないからこそ、ソーシャルの力が働きやすいのかもしれません(福岡氏)」
今のところ、前述したメジャー作品の人気が圧倒的とはいえ、現在日本で支持を集める「進撃の巨人」や「君に届け」などがアメリカでブレイクする日も遠くないのかもしれない。
日本のアニメがこれだけ受け入れられる理由はなんなのだろうか。福岡氏は<オタコン>を訪れた際に、「NANA」の大ファンだというアフリカ系アメリカ人の女性に話を聞いた。
「聞いてみると、女性がはまれるエンターテイメントはアメリカには意外と少ないというんです。『NANA』は日本の物語ですが、田舎から都会に出る女性の成功物語であり、女性同士の友情や恋愛といったユニバーサルな要素がたくさんある」
「日本の漫画やアニメは、大人にも子供にもアピールする点を併せ持っている。アニメーションの側面が子供を惹きつけ、大人が楽しむためのストーリー性やアクションがある。アメコミとの最大の違いはそこです(ペレス氏)」。
アニメ・コンベンションの関係者たちは、将来をどう見通しているのだろうか。
「今後想像できるのは、日本のアニメに気がついたアメリカの映画スタジオが、たとえば宮崎駿氏のような日本のアニメのクリエーターとタッグを組むこと。日米共同の作品が見られるかもしれません(ケルツ氏)」
「クオリティの伴った拡大を目指しています。参加者が安心して楽しめると同時に、企業にもアピールするコンベンションとして成長していきたい(ペレス氏)」
ファッション、音楽、食など、多岐にわたるプログラムで他のコンベンションと違う<ジャパン・エキスポ>のシルデ氏はこう語る。
「<ジャパン・エキスポ>の入場者の大半はアニメファンですが、アニメを通じて日本文化と出会い、日本のことをもっと知りたいと望むファンも多い。アニメ以外の文化に興味を持ってもらうことがひとつの目標です」
ローランド・ケルツ
アメリカ人の父親と日本人の母親の間に生まれ、アメリカと日本で育つ。オーバリン大学、コロンビア大学を卒業後、ニューヨーク大学、ラトガーズ大学、バーナード大学などの教壇に立つ。アメリカでは「プレイボーイ」「サロン」「ヴィレッジ・ヴォイス」「コスモポリタン」「ヴォーグ」などの雑誌や新聞に寄稿する。現在は東京とニューヨークを数ヶ月ずつ行ったり来たりしている。著書に「ジャパナメリカ 日本発ポップカルチャー革命」がある。http://japanamerica.blogspot.com/
トマ・シルデ
1979年フランス生まれ。ビジネス・スクールを卒業後、音楽系出版社勤務を経て、複数のパートナーとともに<ジャパン・エクスポ>の創設にかかわり、2000年の第一回開催に尽力する。2004年には漫画の出版社<Taïfu Comics>を、2009年にはポップ・カルチャーのイベント<コミック・コン・パリ>を創立するなど精力的に活動する。現在は<ジャパン・エクスポ>のバイス・プレジデントを務める。http://www.japan-expo.com/
マーク・ペレス
大学時代に友人の誘いでアニメのクラブに参加して<カウボーイビバップ>と出会ってアニメに興味を持ち、2002年から<アニメ・エクスポ>にボランティアとして参加。2004年からスタッフに加わり、2007年には<アニメ・エクスポ>を運営するソサイエティ・フォー・ザ・プロモーション・オブ・ジャパニーズ・アニメーション(SPJA)の役員会に迎えられ、2009年にCEOに就任。2010年に一度CEO職を退いたが、2011年に復職した。http://www.spja.org/
福岡俊弘
1957年生まれ。1989年アスキー(現:アスキー・メディアワークス)入社。 92 年よりパソコン情報誌「 EYE ・ COM 」編集長。 97年から『週刊アスキー』編集長を務めたほか、ふたつの雑誌の創刊にも携わる。2003年からは同誌編集人。現在はiPhoneで読む海外向けの雑誌アプリ<Tokyo Kawaii Magazine>の編集長を務める。